家族が亡くなったあと、故人が契約していた生命保険や医療保険などが見つかることがあります。

このとき、

「家族が代わりに解約していいの?」

「死亡保険金を請求するのと解約は同じ?」

「契約者が亡くなったら契約は自動的に終了する?」

と迷う人も多いでしょう。

結論からいうと、契約者が亡くなったからといって、すべての保険契約が同じ扱いになるわけではありません。

特に重要なのが、

  • 契約者
  • 被保険者
  • 保険金受取人

のうち、誰が亡くなったのかという点です。

死亡した人が被保険者であれば死亡保険金の請求になるケースがありますが、契約者だけが死亡し、被保険者が別の家族である場合は、契約を引き継ぐ手続きが必要になることがあります。

この記事では、亡くなった家族の保険契約を整理する方法と、解約・名義変更・保険金請求の違いについて解説します。

目次

結論|まず「契約者」と「被保険者」を確認する

亡くなった家族の保険が見つかったら、いきなり解約を申し出るのではなく、最初に契約内容を確認します。

特に確認するのは次の3つです。

  • 契約者は誰か
  • 被保険者は誰か
  • 死亡保険金の受取人は誰か

この組み合わせによって必要な手続きが変わります。

「契約者」と「被保険者」は違う

生命保険では、

契約者
保険会社と契約を結び、契約上の権利や義務を持つ人

被保険者
生命や身体に保障がかけられている人

保険金受取人
保険事故が発生したときに保険金を受け取る人

という役割があります。

例えば、

契約者:父
被保険者:母
死亡保険金受取人:子

という契約もあります。

そのため、「父が亡くなった=死亡保険金が必ず支払われる」とは限りません。

誰が被保険者なのかを確認する必要があります。

ケース1|亡くなった人が契約者でもあり被保険者でもある

例えば、

契約者:父
被保険者:父
死亡保険金受取人:母

という契約で父が亡くなった場合です。

この場合は通常、「解約」ではなく死亡保険金の請求手続きを検討します。

死亡保険金が支払われる契約であれば、保険会社へ死亡の連絡をして必要書類を確認します。

死亡保険金の請求前に「解約したい」と考えるのではなく、まず死亡保障の対象になっているかを確認してください。

ケース2|亡くなった人は契約者だが、被保険者は別の家族

例えば、

契約者:父
被保険者:母

という契約で父が亡くなった場合です。

被保険者である母は存命なので、保険事故が発生していないことがあります。

この場合、保険契約そのものに財産的な価値がある場合は、契約上の権利が相続に関係することがあります。

国税庁では、相続開始時点でまだ保険事故が発生していない生命保険契約に関する権利について、原則としてその時点で解約した場合に支払われる解約返戻金相当額で評価するとしています。

そのため、単純に家族が電話して「解約してください」と処理できるとは限りません。

誰が契約上の権利を引き継ぐのかを確認し、その後に継続または解約を検討します。

ケース3|亡くなった人は保険金受取人だけ

例えば、

契約者:母
被保険者:母
死亡保険金受取人:父

という契約で、被保険者である母より先に父が亡くなったケースです。

受取人が亡くなったからといって、その時点で保険契約が解約されるわけではありません。

国税庁も、まだ保険事故が発生していない生命保険契約について、保険金受取人のみが死亡した一定のケースでは、その死亡時点で課税関係は生じないとしています。

このような場合は、受取人変更の手続きが必要になることがあります。

契約者本人が保険会社へ連絡し、契約内容を確認してください。

契約者が死亡した保険を解約する一般的な流れ

契約者が亡くなった場合の一般的な流れは次のとおりです。

1.保険証券や契約内容を確認する

まず故人の自宅などから、

  • 保険証券
  • 契約内容のお知らせ
  • 保険会社からの郵便物
  • 保険料の口座振替記録
  • クレジットカード明細

などを探します。

保険会社名と証券番号がわかると手続きがスムーズです。

2.保険会社へ契約者死亡を連絡する

保険会社へ、

「契約者が亡くなりました」

と連絡します。

このとき、

  • 契約者氏名
  • 証券番号
  • 死亡日
  • 被保険者
  • 電話している人と故人の関係

などを確認される場合があります。

3.必要な手続きを確認する

契約内容によって、

  • 死亡保険金の請求
  • 契約者変更
  • 契約の承継
  • 解約
  • 受取人変更

など、必要な手続きが変わります。

「解約したい」と決めつけず、

「契約者が死亡した場合、この契約はどのような手続きになりますか」

と確認するのがおすすめです。

4.必要書類を準備する

契約者死亡後の手続きでは、通常の本人解約より多くの書類が必要になる場合があります。

例えば、

  • 保険会社所定の請求書
  • 死亡が確認できる書類
  • 戸籍関係書類
  • 相続人を確認する書類
  • 本人確認書類
  • 振込口座情報

などです。

必要書類は契約内容や保険会社によって異なります。

5.相続関係を確認して手続きする

契約者死亡後も存続する保険契約の場合、誰が契約上の権利を取得するのかを確認する必要があります。

相続人が複数いる場合などは、保険会社から追加書類の提出を求められることがあります。

亡くなった家族がどこの保険会社に入っていたかわからない場合

家族が保険へ加入していたはずなのに、

「保険証券が見つからない」

「どこの生命保険会社なのかわからない」

というケースもあります。

まず、

  • 通帳
  • クレジットカード明細
  • 確定申告書
  • 年末調整の生命保険料控除証明書
  • 郵便物
  • メール

などを確認しましょう。

それでも生命保険契約の手掛かりが見つからない場合、一定の条件を満たせば生命保険協会の「生命保険契約照会制度」を利用できる場合があります。

生命保険協会では、死亡などによって生命保険契約の手掛かりを失い、保険金等の請求が難しい場合に契約照会制度を利用できると案内しています。

契約の存在が確認された後は、各生命保険会社へ契約内容の照会や請求手続きを行います。生命保険協会が保険金請求や解約そのものを代行する制度ではありません。

家族なら誰でも解約できるわけではない

故人の配偶者や子どもだからといって、電話一本で自由に保険を解約できるわけではありません。

保険契約には財産上の権利が関係するため、

  • 誰が相続人なのか
  • 誰が契約上の権利を取得したのか
  • 遺言書があるか
  • 遺産分割が必要か

などを確認する場合があります。

そのため、保険会社から戸籍謄本などの提出を求められることがあります。

解約返戻金がある場合は相続税に関係する?

契約者が亡くなった時点で被保険者が別の人であり、保険契約がそのまま存続する場合、生命保険契約に関する権利が相続財産として評価されることがあります。

国税庁では、相続開始時にまだ保険事故が発生していない生命保険契約の権利について、原則として相続開始時の解約返戻金相当額で評価するとしています。

例えば、故人が契約者で、配偶者を被保険者とする終身保険を契約していた場合などです。

具体的な課税関係は、

  • 契約者
  • 被保険者
  • 保険料負担者
  • 相続人
  • 解約返戻金額

などによって変わります。

高額な契約の場合は、税務署や税理士などへの確認をおすすめします。

死亡保険金と解約返戻金を混同しない

特に注意したいのが、

死亡保険金と解約返戻金は別物

という点です。

死亡保険金は、被保険者が死亡した場合に契約条件に従って受取人へ支払われるものです。

一方、解約返戻金は、契約を途中で解約した場合に契約内容に応じて支払われるものです。

被保険者が死亡した契約について、本来死亡保険金の請求対象なのに「契約を解約したい」とだけ伝えると、話が複雑になる可能性があります。

まず、

「契約者が死亡した」

のか、

「被保険者が死亡した」

のかを保険会社へ正確に伝えましょう。

解約返戻金がない保険もある

すべての生命保険に解約返戻金があるわけではありません。

定期保険や医療保険などでは、商品によって解約返戻金がない、または非常に少ない場合があります。

国税庁も、相続時の生命保険契約に関する権利の評価について、いわゆる掛け捨て保険で解約返戻金がないものは評価しないとしています。

そのため、

「何年も保険料を払っていたから、解約すれば必ずお金が戻る」

とは限りません。

保険会社へ電話するときに伝える内容

手元にわかる範囲で次の情報を準備するとスムーズです。

  • 亡くなった契約者の氏名
  • 生年月日
  • 住所
  • 死亡日
  • 証券番号
  • 被保険者の氏名
  • 電話している人と故人の続柄

証券番号がわからなくても、ほかの情報から確認してもらえる場合があります。

保険料の引き落としだけ先に止めてもいい?

契約者が亡くなったあとも保険料が引き落とされている場合があります。

ただし、銀行口座からの引き落としだけを先に止めるのではなく、まず保険会社へ契約者が死亡したことを連絡するのがおすすめです。

口座振替だけ止めても、正式な解約や契約者変更にはならない場合があります。

また、被保険者が存命なら、保険をそのまま継続した方がよいケースもあります。

契約状態を確認してから対応しましょう。

相続人同士で意見が分かれている場合

「解約して現金にしたい」

「保険を残しておきたい」

など、相続人同士で意見が異なることもあります。

契約上の権利が相続財産となる場合は、誰が引き継ぐのか整理が必要になるケースがあります。

相続関係が複雑な場合や高額な保険契約の場合は、司法書士・弁護士・税理士などの専門家へ相談することも検討しましょう。

まとめ|契約者死亡後は「すぐ解約」ではなく契約関係を確認する

亡くなった家族の生命保険が見つかった場合は、いきなり解約手続きをするのではなく、

  • 契約者は誰か
  • 被保険者は誰か
  • 保険金受取人は誰か
  • 死亡保険金の請求対象か
  • 契約を引き継げるか
  • 解約返戻金があるか

を確認してください。

特に、

「契約者が死亡した場合」

と

「被保険者が死亡した場合」

では手続きが大きく異なります。

保険会社へ死亡の事実を伝え、必要な手続きを確認したうえで、死亡保険金の請求・契約者変更・契約承継・解約のどれを行うべきか判断しましょう。

保険会社がわからない場合は、生命保険協会の生命保険契約照会制度を利用できるケースもあります。

免責事項

本記事は、契約者死亡後の生命保険契約に関する一般的な手続きを解説したものです。必要な手続き、相続上の取扱い、必要書類、解約返戻金、税務上の取扱いなどは契約内容や相続関係によって異なります。具体的な手続きについては契約先の生命保険会社へ、相続・税務については税務署や税理士、弁護士、司法書士などの専門家へご確認ください。