奨学金の保証人を辞退したい。親族の返還免除と機関保証への切り替え手続きは可能か
大学や専門学校を卒業する3月末、奨学金の返還が本格的にスタートするタイミングで急増するのが「親族からの保証人辞退の申し出」です。
「甥っ子の大学進学時に頼まれて連帯保証人になったが、親族間で揉めて疎遠になったので辞めたい」 「自分も定年退職で高齢になり、万が一の時に数百万円の借金を代わりに被りたくない」
このような切実な悩みは後を絶ちません。しかし、奨学金(主に日本学生支援機構:JASSO)の保証人制度は、金融機関の住宅ローンなどと同様に法的な拘束力が極めて強く、個人の一方的な都合で勝手に辞めることは原則として認められていません。
この記事では、奨学金の保証人を辞退するための厳しい条件と、連帯保証人の責任から逃れるための唯一の解決策とも言える「機関保証への切り替え手続き」の具体的な方法について解説します。
「連帯保証人」と「保証人」の逃れられない責任
日本学生支援機構(JASSO)の奨学金を「人的保証」で借りる場合、必ず2人の人間を立てる必要があります。原則として、父母のどちらかが「連帯保証人」となり、おじやおば等の4親等以内の親族が「保証人」となります。
これらは単なる緊急連絡先ではありません。奨学生本人が返還を延滞した場合、連帯保証人は本人と全く同じ支払い義務を負います。「まずは本人に請求してくれ」と拒否する権利はありません。また、親族がなっている「保証人」であっても、本人と連帯保証人の両方が支払えなくなった場合には、残りの借金を返還する強力な法的義務が発生します。
「疎遠になったから」「定年で収入が減ったから」という理由だけで、これらの責任から逃れることは法律上不可能です。機構側が辞退を認めてくれない限り、完済するまで、あるいは自己破産するまでその責任は重くのしかかります。
別の親族を新たな保証人に立てる方法(保証人の変更)
どうしても保証人を辞めたい場合、機構が認めている正当な辞退方法の一つが「代わりの人物を保証人として差し出す」ことです。これを「保証人の変更手続き」と呼びます。
たとえば、現在保証人になっている「おじ」が辞退したい場合、本人の別のおじや、おば、成人して安定収入のある兄弟姉妹などを「新しい保証人」として立てます。新しい保証人が、機構の定める条件(原則として65歳未満で、一定の収入がある4親等以内の親族)をクリアしていれば、変更が承認され、元の保証人は無事に責任から解放されます。
しかし、数百万円の借金の保証人を喜んで引き受けてくれる親族など、そう簡単に見つかるものではありません。親戚間で押し付け合いになり、泥沼のトラブルに発展するケースも多々あります。
唯一の解決策「機関保証」への切り替え
代わりの親族が見つからない場合の最も現実的で、かつ確実な解決策が「機関保証(きかんほしょう)への変更」です。
機関保証とは、一定の保証料(毎月数千円程度)を支払うことで、民間の保証機関(公益財団法人 日本国際教育支援協会)に保証人になってもらう制度です。これに変更すれば、現在設定されている連帯保証人(父母)と保証人(おじ・おば等の親族)の両方が一斉に保証人から外れることができます。
機関保証への変更は、返還が始まっている途中からでも可能です。保証人を降りたい親族にとっては、まさに救いの手と言える制度です。
機関保証への切り替え手続きにおける最大の壁
機関保証へ切り替えれば保証人を辞退できると聞いて安心するのは早計です。ここには越えなければならない最大の壁が存在します。
それは、「保証人の変更や機関保証への切り替え手続きは、奨学生本人(借主)しか行うことができない」という絶対的なルールです。保証人である親族が、日本学生支援機構に直接電話をして「機関保証に切り替えるから自分を外してくれ」と要求しても、一切受け付けてもらえません。
手続きを進めるためには、まず奨学生本人に連絡を取り、「私は保証人を辞めるから、あなたが責任を持って機関保証への変更届を取り寄せて手続きをしてくれ」と強く説得し、本人に行動させる必要があります。
さらに、機関保証へ切り替えるためには「一括保証料」という費用が必要になります。すでに卒業して返還中の場合、残りの返還年数や借入総額に応じた保証料(数万円から数十万円にのぼることもあります)を、本人が一括で支払わなければ切り替えは承認されません。本人がこの費用を払えない、あるいは面倒くさがって手続きをしてくれない場合、あなたは保証人から抜け出すことができなくなります。
まとめ:本人との話し合いが全てのスタートライン
3月末の卒業や就職を機に奨学金の保証人を辞退したいと考えるのであれば、黙っていても解決しません。
1.「一身上の都合で辞退できない」という現実を受け入れる。 2.奨学生本人(甥や姪など)に連絡を取り、機関保証への切り替えを要求する。 3.本人が手続き書類(保証制度変更依頼書など)を機構に請求し、一括保証料を支払うまで進捗を確認する。
親族間でお金の話をするのは非常に気が重いものですが、借金の保証人というリスクを抱えたまま老後を迎えるのはあまりにも危険です。本人が社会人として自立する春のタイミングを見計らい、早期に話し合いの場を持つことを強くお勧めします。
免責事項 本記事は独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)の奨学金制度における一般的な保証規定に基づいて解説しています。保証人の変更条件や機関保証への切り替えに必要な一括保証料の金額は、奨学金の貸与額、返還残回数、および現在の返還状況(延滞の有無など)によって厳密に計算され、個別に異なります。また、延滞が発生している状態では機関保証への変更が認められない場合があります。具体的な手続きや書類の請求については、必ず奨学生本人が日本学生支援機構の奨学金相談センターへお問い合わせください。