春の保護者会や入園説明会で漂う、あの重苦しい沈黙。 「誰かやってくれる人はいませんか?」という先生や現役員さんの声に、目を伏せてやり過ごしたいけれど、くじ引きや推薦で当たってしまったらどうしよう…。

幼稚園や保育園の役員(PTA)は、共働き家庭が増えた現代でも「一世帯一回」や「ポイント制」などのルールで縛られていることが多く、断るのが非常に難しいのが現状です。

しかし、家庭の事情や健康上の理由で「物理的に不可能」な場合、無理をして引き受けると自分自身が倒れてしまったり、園や他の保護者に迷惑をかけてしまったりする結果になりかねません。

この記事では、役員選出を回避するための「納得感のある断り方」と、どうしても続けられなくなった場合の「途中辞退の方法」について解説します。


💡 この記事でわかること

・ 「仕事が忙しい」だけでは通じない理由

・ 周囲が納得せざるを得ない「断り文句」のテンプレート

・ 役員決定後や任期途中で辞める(脱退する)手順


前提:「忙しい」は理由になりません

まず知っておくべき残酷な現実は、「仕事が忙しいから」という理由は、ほとんどの園で通用しないということです。 今の時代、保護者の大半は働いています。「フルタイムだから」「下の子がいるから」と言っても、「みんな一緒です」「できる範囲で協力してください」と返されて終わりです。

役員を免除してもらうためには、「個人の努力ではどうにもならない、物理的な不可抗力」を具体的に提示する必要があります。

【免除・辞退が認められやすい理由】

  • 自身の病気・妊娠: 切迫早産、精神疾患、定期的な通院が必要な持病など。
  • 介護(ケアラー): 親の介護や、障害・疾患を持つ家族のケア。
  • 家庭環境の激変: 離婚調停中、単身赴任によるワンオペ育児など。

ステップ1:アンケート(事前調査)での断り方

多くの園では、役員決めの前に「アンケート」が配られます。ここで「できない」に丸をつけるだけでなく、備考欄に具体的な事情を書くことが重要です。

例文A:妊娠中・健康上の理由

「現在、第二子を妊娠中で〇月に出産予定です。医師から切迫早産の兆候があるため安静を指示されており、役員としての活動(集まりへの参加や行事の手伝い)が困難です。ご迷惑をおかけしてはいけないため、今回は辞退させていただきたく存じます。」

例文B:介護・家庭の事情

「同居の実父が要介護認定を受けており、平日は仕事、土日は介護と通院の付き添いで自宅を空けることができません。急な呼び出しに対応することも難しく、皆様にご迷惑をおかけする可能性が高いため、免除をお願いしたく存じます。」

例文C:メンタルヘルスの不調

「現在、心療内科に通院しており、医師より集団での活動やストレスのかかる役割を控えるよう診断書が出ております。自身の体調管理で精一杯の状況ですので、大変心苦しいのですが役員をお引き受けすることができません。」 (※診断書の提出が必要と言われたら出せるようにしておきましょう)

ステップ2:選出の場(くじ引き・推薦)での断り方

アンケートで免除されず、当日の話し合いやくじ引きになってしまった場合、皆の前で事情を話さなければならないことがあります。 ここでは「やりたくない」ではなく、「引き受けると逆に迷惑をかける(責任を持てない)」というスタンスで話すのがコツです。

NGワード: ×「人付き合いが苦手なので」 ×「仕事が忙しいので」(具体性がない場合)

OKな伝え方(例): 「本来なら協力すべきところ申し訳ありません。現在、仕事の拘束時間が長く、勤務中は私用の電話やメールが一切禁止されています。 平日の行事や急な集まりにどうしても参加できず、連絡も取れない状況になりますので、実質的に役員の役割を果たすことが不可能です。名前だけの役員になっては他の役員さんの負担を増やしてしまうため、辞退させてください。」

ステップ3:任期途中での「辞退(脱退)」方法

一度引き受けてしまったけれど、状況が変わって続けられない、あるいは人間関係やプレッシャーで体調を崩してしまった場合。 無理をして任期満了まで耐える必要はありませんが、辞め方には順序が必要です。

1. 会長または園長に相談する

全体LINEなどでいきなり「辞めます」と言うのは避けましょう。まずはトップ(会長)または園側(園長・主任)に個別に相談します。

2. 「ドクターストップ」をカードにする

人間関係が辛い場合でも、それをそのまま伝えると揉める原因になります。 最も角が立たないのは「体調不良(ドクターストップ)」です。 「役員の活動によるストレスで体調を崩し、医師から活動を休止するよう言われた」と伝えれば、周囲も無理強いはできません。

3. 辞退届・挨拶の例文

「突然のご連絡で申し訳ありません。 実は以前から体調を崩しており通院を続けておりましたが、先日医師より、現状の生活の中で役員活動を継続することは困難であると診断されました。 これ以上皆様にご迷惑をおかけするわけにはいかないため、大変残念ですが、役員を辞退させていただきたく存じます。 本来ならば任期を全うすべきところ、このような形になり心よりお詫び申し上げます。」

よくある質問

Q. 「代わりの人を連れてきて」と言われました。

A. 本来、個人の保護者に人事権はないため、代役を探す義務はありません。 「心当たりを当たりましたが、見つかりませんでした。これ以上はどうしようもありません」と伝えて、選出委員会や本部に委ねてください。無理に友人を探すと、その友人との関係が壊れます。

Q. 診断書は必要ですか?

A. 園の規約によります。 口頭だけで済む場合も多いですが、厳しい園では提出を求められることもあります。心療内科等であれば「環境調整が必要」といった内容で書いてもらえることが多いです。

Q. 辞めた後、気まずくなりませんか?

A. 一時的には話題になるかもしれませんが、喉元過ぎれば熱さを忘れます。 挨拶する時は堂々とし、行事などで元役員仲間と会った時に「あの時はご迷惑をおかけしました、おかげさまで体調は落ち着いています」と一言添えれば十分です。

まとめ

保護者会役員を辞退・脱退する際のポイントは以下の3点です。

  1. 「忙しい」ではなく「物理的に不可能」であることを具体的に伝える。
  2. 感情的にならず、「引き受けると逆に迷惑がかかる」という論理で話す。
  3. 追い詰められたら「医師の判断」を盾にして自分を守る。

子供のための活動で、親が倒れてしまっては本末転倒です。 「逃げる」のではなく「家庭を守る」という意識を持って、毅然とした態度で対応してください。

【免責事項】

本記事は一般的な対応方法について解説したものです。園やPTAの規約、慣例によって対応が異なる場合がありますので、状況に合わせて判断してください。また、診断書の取得等には費用がかかります。

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