地域の安全を守る消防団。その崇高な理念とは裏腹に、訓練、飲み会、夜警、操法大会への強制参加など、実生活への負担が限界に達し「辞めたい」と願う団員は少なくありません。

しかし、慢性的な人手不足により、辞意を伝えても「代わりを連れてこい」「名前だけでいいから残ってくれ」と強烈な引き止めに遭うのが常です。

法的には、消防団員は「特別職地方公務員(非常勤)」であり、退職の自由(民法627条に準ずる権利)が保障されています。本来、誰の許可も必要なく辞めることができるのです。

この記事では、情に訴える引き止めを論理的にかわし、確実に退団するための手順と交渉術を解説します。


この記事でわかること

・ 「仕事」や「家庭」を理由にした、反論不可能な退団理由

・ 「名前だけでいい(幽霊団員)」の誘いを断る方法

・ どうしても辞めさせてくれない時の最終手段(返納・相談先)


手順1:伝えるタイミングは「年末」がベスト

消防団の人事は4月1日から翌年3月31日までの年度区切りで動いています。 3月末での退団を目指す場合、名簿の作成や予算の関係上、遅くとも「12月〜1月」には直属の上司(班長や部長)に伝えておく必要があります。

2月や3月になってから伝えると、「来年度の名簿にもう載せてしまった」「予算が決まった」と言い訳され、もう1年延ばされる原因になります。

手順2:引き止められない「鉄板の理由」を用意する

「活動が辛い」「人間関係が嫌だ」という理由はNGです。「みんな辛いんだ」「俺も我慢している」と精神論で返されます。 相手がぐうの音も出ない「物理的な不可抗力」を理由にします。

理由1:仕事の環境変化(最強) 「転職(または部署異動)により、勤務地が遠くなり、緊急招集に絶対に応じられなくなりました」 「業務内容が変わり、休日出勤や夜勤が増え、消防活動との両立が物理的に不可能になりました」

生活の糧である仕事を理由にされると、さすがの分団長も無理強いはできません。

理由2:家族のケア(介護・育児) 「親の介護が必要になり、土日や夜間は実家に通わなければならず、地元を空けることが増えます」 「妻が働きに出ることになり、私が子供の面倒を見なければならなくなりました」

理由3:健康上の理由(ドクターストップ) 「腰痛が悪化し、医師から激しい運動や重いものを持つことを禁じられました」 ※操法大会の練習などがきつい場合に有効です。

手順3:「名前だけでいいから」を断る技術

辞めようとすると必ず提案されるのが、「活動しなくていいから籍だけ置いておいてくれ(幽霊団員化)」という打診です。 これは団員数を確保して交付税(予算)を減らさないための組織の都合ですが、絶対に断ってください。後々トラブルになります。

断り方のトーク例 「万が一、近所で火災があった際、名前があるのに現場に行けないというのは、消防団員としての責任を果たせず、地域の方々に申し訳が立ちません。中途半端なことはしたくないので、きっぱり退団させてください。」

「会社の規定が変わり、副業や消防団活動への名義貸しについて厳しくなりました。会社に迷惑をかけられないので、籍を残すことはできません。」

手順4:話が通じない時の相談先

直属の上司(班長・部長)が話を聞いてくれない、あるいは「代わりを連れてこないと辞めさせない」と脅された場合は、組織の階層を飛ばして相談します。

  1. 分団長・団長へ直訴する 直属の上司が握りつぶしている場合、その上の責任者に「辞めたいと伝えているのに受理されない」と相談します。
  2. 市役所の「消防総務課(防災課)」へ行く これが最も確実です。消防団の事務局は市役所の中にあります。 「退団届を出したいが受け取ってもらえない」と役所の担当職員に相談してください。役所側は「本人の意思に反して強制的に在籍させること」が人権問題やコンプライアンス違反になることを知っているため、団長に対して指導が入るか、役所預かりで退団手続きを進めてくれる場合があります。

手順5:最終手段(貸与品の返納)

何を言ってもダメな場合、法的な強硬手段に出ます。 「退団届」を作成し、貸与されている被服(制服、活動服、ヘルメット、長靴など一式)を洗濯・クリーニングして箱に詰め、退団届を添えて「分団長の自宅」または「詰所」へ送りつける(または置いてくる)という方法です。

「〇月〇日をもって退団します。貸与品を返却いたします」と書面で一方的に通告すれば、それ以上拘束する権限は相手にはありません。

まとめ

消防団を辞める交渉のポイントは以下の通りです。

  1. 12月〜1月中に切り出す。
  2. 理由は「仕事」か「家庭」の不可抗力にする。
  3. 「名前貸し」は責任問題を盾に断る。
  4. 拉致があかない場合は「市役所」を巻き込む。

消防団はあくまでボランティア精神に基づく活動です。生活や健康を犠牲にしてまで続ける義務はありません。 「長い間お世話になりました」という感謝の言葉を添えつつ、毅然とした態度で退団の意思を貫いてください。

【免責事項】 本記事は一般的な組織運営の傾向と対策について解説したものです。地域ごとの条例や消防団の慣習、人間関係により適切な対応が異なる場合があります。トラブルが深刻化しそうな場合は、自治体の消防担当部署や弁護士などの専門家にご相談ください。

退会・解約の教科書 運営者情報・本サイトについて