「第一志望の企業に受かったので、キープしていた企業を断りたい」 「正直、面接官の雰囲気が合わなかったから辞退したい」

内定辞退の連絡をする際、最も頭を悩ませるのが「辞退理由」です。 正直に「御社は滑り止めでした」と言えるはずもありませんし、「給料が安いから」なんて言えば角が立ちます。かといって、嘘をついてバレるのも怖い。

人事担当者に納得してもらい、かつ余計なツッコミ(引き止め)を受けずに去るためには、「嘘ではないが、すべてを話さない(本音と建前)」の使い分けが重要です。

この記事では、円満に辞退するための「安全な建前(たてまえ)」の作り方と、他社名を執拗に聞かれた時の切り返し方を解説します。


結論:辞退理由は「正直」に言わなくていい

就活はビジネスです。恋愛で別れを告げる時に「顔がタイプじゃなかった」と正直に言わないのと同じで、企業に対しても100%の本音を伝える必要はありません。

むしろ、バカ正直な理由はトラブルの元です。

NGな「本音」理由の例

  1. 条件面(給与・残業・福利厚生) 「給料が他社より安かったので」 → 【リスク】 「入社後の昇給でカバーできる」「家賃補助が出るから実質は変わらない」など、交渉や説得の余地を与えてしまいます。
  2. 雰囲気・人柄 「面接官の態度が怖かったので」「社風が古臭いので」 → 【リスク】 相手のプライドを傷つけ、怒らせる原因になります。
  3. 「滑り止めだった」 「第一志望に受かったので」 → 【リスク】 事実だとしても、「最初からそのつもりだったのか」と不快感を与えます。「ご縁」や「適性」という言葉に置き換えるのがマナーです。

突っ込まれない「最強の建前」フレーズ集

では、どう伝えればいいのでしょうか。 鉄則は、「自分のキャリア観(将来やりたいこと)」を理由にすることです。これなら、企業の努力では変えられない「個人の価値観」の問題になるため、相手も引き下がざるを得ません。

1. 「適性・キャリアビジョン」の不一致(万能型)

最も無難で、どの業界・企業にも使える黄金フレーズです。

「自身の適性や将来のキャリアビジョンを改めて慎重に検討した結果、他社とのご縁を優先することにいたしました」

2. 「業界・職種」の違い(納得感が高い)

もし、辞退する企業と入社する企業で「業界」や「職種」が違う場合に有効です。

「就職活動を通じて様々な業界のお話を伺う中で、〇〇業界で専門スキルを身につけたいという思いが強くなり、別の道に進む決断をいたしました」

3. 「勤務地・家庭の事情」(不可抗力)

Uターン就職や、実家の事情などが本当にある場合は、これを理由にすると強力です。

「家族と相談を重ねた結果、地元である〇〇県での就職を優先することにいたしました」


「どこの会社に行くの?」と聞かれたら

電話で辞退を伝えると、高確率で「差し支えなければ、どちらの企業に行くのか教えてもらえますか?」と聞かれます。

これは、単に今後の採用活動の参考にしたい(データ収集)だけの場合と、「その会社ならウチの方がいいよ」と説得(他社ネガキャン)したい場合の2パターンがあります。

基本:「社名」まで言う義務はない

具体的な社名を言う義務はありませんし、言わない方が無難です。 業界が狭い場合、悪い噂が広まるリスクもゼロではないからです。

回答パターンA:ふんわり濁す(おすすめ)

業界や職種だけを伝えて、社名は伏せます。

「IT業界の企業様です」 「営業職として内定をいただいた企業様です」 「大変申し訳ございませんが、具体的な社名は控えさせていただきます」

回答パターンB:正直に言う(有名企業の場合)

相手が誰もが知る大手企業や、明らかに格上の企業である場合、正直に伝えた方が「それなら仕方ない」と諦めてもらいやすいケースもあります。 ただし、そこでもし相手企業を悪く言われても、「貴重なご意見ありがとうございます」と受け流す強さが必要です。


【コピペOK】理由別・辞退メールテンプレート

パターン1:【王道】検討の結果、他社へ行く場合

件名: 内定辞退のご連絡(〇〇大学 氏名)

本文: 〇〇株式会社 採用担当 〇〇様

お世話になっております。 〇〇大学の〇〇(あなたの氏名)です。

先日は内定のご連絡をいただき、誠にありがとうございました。 私の将来性を評価していただいたこと、心より感謝申し上げます。

いただいた内定につきまして、一身上の都合により誠に恐縮ながら、辞退させていただきたくご連絡いたしました。

就職活動を通じて、自身のキャリアビジョンや将来の目標について改めて深く検討いたしました。 その結果、別の業界で挑戦したいという気持ちが強くなり、他社とのご縁を優先するという苦渋の決断に至りました。

御社には選考の貴重な機会をいただきながら、このような回答となりますこと、深くお詫び申し上げます。

本来であれば直接お伺いすべきところ、メールでのご連絡となりますこと、何卒ご容赦ください。 末筆ながら、御社の益々のご発展をお祈り申し上げます。


署名

パターン2:【職種違い】エンジニア志望などが営業を断る場合

本文(理由部分の書き換え):

(前略) 御社からのご評価は大変光栄でございましたが、自身の適性について再考いたしました結果、ものづくりの現場で技術を磨きたいという思いを断ち切れず、技術職として内定をいただいた他社へ入社することを決意いたしました。

御社の期待に添えず大変心苦しいのですが、何卒ご容赦いただけますようお願い申し上げます。 (後略)


まとめ:理由は「抽象的」にするのが大人のマナー

内定辞退の理由を伝える際のポイントは以下の3点です。

  1. 「条件」や「不満」は言わない(引き止めの隙を与えない)。
  2. **「自分のキャリア観」「適性」**を理由にする(相手が否定できない領域)。
  3. 他社名は**「業界・職種」**程度に留め、具体名は伏せるのが安全。

企業側も、学生が複数社を受けていることは百も承知です。 「検討した結果、他社に行きます」と伝えることは、決して失礼なことではありません。

変に取り繕って嘘の上塗りで苦しくなるよりも、定型的な「建前」を使って、スマートに辞退手続きを完了させましょう。

【免責事項】 本記事は一般的な就職活動のマナーおよびトラブル回避術について解説しています。内定承諾書の法的効力や、損害賠償請求の可能性については、通常の採用活動の範囲内を想定しています。特殊な契約(入社前研修の費用負担契約など)を結んでいる場合や、悪質なハラスメント行為を受けた場合は、速やかに大学のキャリアセンター、労働局、弁護士等の専門機関にご相談ください。

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